2020/02/13

Tamed Spider -後編-















『私はあの女が悪いと思う!』




『そもそも初めはうちのボスに言い寄ろうとしてたのに』
『死んでいたのはボスか、財団幹部の誰か……だったかもしれない』






「……そういう事か」




「バローネの正統な後継者は、自らのブラッドを飲ませた者を恒久的に支配する力を得る」




「その力は本来、エルマ一人のものだった」
「バローネの血筋の者にその力を奪われて数百年……ようやく力を奪い返すための『力』を持つ者がこの時代に現れた」




「それがマグダレーナさん、あなただったのね?」









『バローネの血を引く者は今、この時代に「二人」存在する』







『一人はまだ幼く……また、正式な結婚の後に産まれた子ではない』
『ゆえに、力を正しく受け継いでいない可能性が高い』




『もう一人は行方を眩ませた女に執着している』
『今のジェラルドは誰に誘惑されても靡く事は無いだろう……』
『それでなくとも洗脳能力がある限り、あれを殺すのは容易ではない』

『が、どうだろう? 「クロゴケグモ」が現れたならば』




『「誰であれ必ず、愛し合い、奪う」能力を持つお前なら』




『バローネの血の使い手と結ばれ、そして……』







『終わらせられる。お前なら』




『バローネ卿には忠実な側近がいるわ。赤毛の坊やが邪魔をするかも』
『ならば先に側近を殺ればいい』
『あの坊やを誘惑するの?』
『お前なら容易に出来る』




『お前なら……』









「…………そうよ。私なら、それが出来る。出来てしまう」




「シオンが死んだ今、私はようやく確信した」
「私には本当にそういう『力』がある」
「愛し合う筈の無い立場の者ですら私は愛し、そして奪う」




「クロゴケグモはこれからも殺し続けるでしょう」
「私が死ぬか……もしくは、ジェラルド・バローネを殺すまで」




「させない」







「僕が殺させない」
「……そうね」




「愛する者をそう易々と死なせはしない――そうではなくて?」









「目的も一致したわね? 私達」




「シメオン先生、破約の儀式をお願いします」
「ヴァンパイアに戻るのか?」




「魔法では守れません……彼を。『エルマ』から」

© simensoka
Maira Gall