2019/05/30

Eclectic Arts Household






「「『エルマの呪い』?」」


L「これはね、少し前にヒットした、あるドラマシリーズにまつわる噂」
M「ネットの噂?」
L「そう。ただのネットの噂なんだけど」




「初期のシーズンに出演していた俳優の一人は、劇中で圧倒的な存在感を放っていたにも関わらず芸能界から姿を消した」


「中盤で登場した女優の一人は、突然の事故で夫を亡くした」


「そしてその女優と共演した別の女優も、現在は役者を辞めて消息不明。StrangerVilleで黒服の男に捕まったと噂されている」




L「このドラマの制作に関わったキャストの多くが、何かしらの不幸な出来事に巻き込まれてる」


L「彼らの不幸な禍いの元凶こそが『エルマ』と呼ばれる伝説的なヴァンパイア。このドラマのストーリーは、『エルマ』にとって決して許されないタブーを犯してしまったの」


A「タブーってどんな? 『エルマ』の悪口? ヴァンパイアにしか解読できない古代文字とかで『へなちょこババア!』って背景のセットの中に……」
M「面白いな、それ。何百年も生きたヴァンパイアだから、きっとプライドが高いんだ」

L「このドラマはね、実在した貴族の血を引く一族の歴史をモチーフにした、架空の名家の盛衰を描いたファンタジー大河なの」




「モデルになった一族の始祖にあたる女性はとても美しい人だったそうなんだけど、」


「このドラマは彼女のことを『醜く愚かな令嬢』と改変して描いた」


「これが伝説の魔女『エルマ』の逆鱗に触れて、ドラマの出演者達に呪いの言葉が振り掛けられた」


「『エルマ』は彼女を愛しているから。彼女がこの世からいなくなって、何百年と経った今でもなお……」




「『エルマ』という魔女は本当にいる」






L「……っていう噂を元に新作を書いてみたんだけど」


A「……いいんじゃない? とってもミステリアス! レズリー、ヴァンパイアの彼氏が出来てから筆が冴えてるわね」
L「ふふ、ありがとうアリス」


A「ベストセラー間違いなしよ! ね、マークも好きでしょ、こういう話」
M「あぁ……けど、そのネットの噂って実在するんだろ? 危険じゃないか? 小説にその『魔女』が執着する女性のことを書いたりして、レズリーがもし……」


A「アナタって陰謀論者?」
M「何でそうなるんだよ」
A「ヴァンパイアはともかく、魔女の呪いなんてただのファンタジーじゃない」
M「信じてなきゃ怖くないってもんでもないだろ。アリスには解んないだろうけどさ」
A「はぁ? どういうことよ?」


L「あ、電話」







「ハァイ、カルロ。こんな時間にどうかしたの?」


「……明日の約束? ダメになったって、どうして?」






『……が………』







「なぁに? よく聞こえないわ」






『……友達が……夕べ、亡くなって……』


© simensoka
Maira Gall